Python 1.4 になってから、動的にリンクされるような拡張モジュールをビルドするためのメイクファイルを作成するような、特殊なメイクファイルをUnix 向けに提供するようになりました。Python 2.0 からはこの機構 (いわゆる Makefile.pre.in および Setup ファイルの関係ファイル) はサポートされなくなりました。インタプリタ自体のカスタマイズはほとんど使われず、 distutils で拡張モジュールをビルドできるようになったからです。
distutils を使った拡張モジュールのビルドには、ビルドを行う計算機上に distutils をインストールしていることが必要です。 Python 2.x には distutils が入っており、 Python 1.5 用には個別のパッケージがあります。distutils はバイナリパッケージの作成もサポートしているので、ユーザが拡張モジュールをインストールする際に、必ずしもコンパイラが必要というわけではありません。
distutils ベースのパッケージには、駆動スクリプト (driver script) となる setup.py が入っています。 setup.py は普通の Python プログラムファイルで、ほとんどの場合以下のような見かけになっています:
from distutils.core import setup, Extension
module1 = Extension('demo',
sources = ['demo.c'])
setup (name = 'PackageName',
version = '1.0',
description = 'This is a demo package',
ext_modules = [module1])
この setup.py とファイル demo.c があるとき、以下のコマンド
python setup.py build
を実行すると、 demo.c をコンパイルして、 demo という名前の拡張モジュールを build ディレクトリ内に生成します。システムによってはモジュールファイルは build/lib.system サブディレクトリに生成され、 demo.so や demo.pyd といった名前になることがあります。
setup.py 内では、コマンドの実行はすべて setup 関数を呼び出して行います。この関数は可変個のキーワード引数をとります。例ではその一部を使っているにすぎません。もっと具体的にいうと、例の中ではパッケージをビルドするためのメタ情報と、パッケージの内容を指定しています。通常、パッケージには Python ソースモジュールやドキュメント、サブパッケージ等といった別のファイルも入ります。 distutils の機能に関する詳細は、 Python モジュールの配布 に書かれている distutils のドキュメントを参照してください; この節では、拡張モジュールのビルドについてのみ説明します。
駆動スクリプトをよりよく構成するために、決め打ちの引数を setup() に入れておくことがよくあります。上の例では、 setup() の ext_modules は拡張モジュールのリストで、リストの各々の要素は Extension クラスのインスタンスになっています。上の例では、 demo という名の拡張モジュールを定義していて、単一のソースファイル demo.c をコンパイルしてビルドするよう定義しています。
多くの場合、拡張モジュールのビルドはもっと複雑になります。というのは、プリプロセッサ定義やライブラリの追加指定が必要になることがあるからです。例えば以下のファイルがその実例です。
from distutils.core import setup, Extension
module1 = Extension('demo',
define_macros = [('MAJOR_VERSION', '1'),
('MINOR_VERSION', '0')],
include_dirs = ['/usr/local/include'],
libraries = ['tcl83'],
library_dirs = ['/usr/local/lib'],
sources = ['demo.c'])
setup (name = 'PackageName',
version = '1.0',
description = 'This is a demo package',
author = 'Martin v. Loewis',
author_email = 'martin@v.loewis.de',
url = 'http://docs.python.org/extending/building',
long_description = '''
This is really just a demo package.
''',
ext_modules = [module1])
この例では、 setup() は追加のメタ情報と共に呼び出されます。配布パッケージを構築する際には、メタ情報の追加が推奨されています。拡張モジュール自体については、プリプロセッサ定義、インクルードファイルのディレクトリ、ライブラリのディレクトリ、ライブラリといった指定があります。 distutils はこの情報をコンパイラに応じて異なるやり方で引渡します。例えば、Unix では、上の設定は以下のようなコンパイルコマンドになるかもしれません:
gcc -DNDEBUG -g -O3 -Wall -Wstrict-prototypes -fPIC -DMAJOR_VERSION=1 -DMINOR_VERSION=0 -I/usr/local/include -I/usr/local/include/python2.2 -c demo.c -o build/temp.linux-i686-2.2/demo.o
gcc -shared build/temp.linux-i686-2.2/demo.o -L/usr/local/lib -ltcl83 -o build/lib.linux-i686-2.2/demo.so
これらのコマンドラインは実演目的で書かれたものです; distutils のユーザは distutils が正しくコマンドを実行すると信用してください。
拡張モジュールをうまくビルドできたら、三通りの使い方があります。
エンドユーザは普通モジュールをインストールしようと考えます; これには
python setup.py install
を実行します。
モジュールメンテナはソースパッケージを作成します; これには
python setup.py sdist
を実行します。
場合によっては、ソース配布物に追加のファイルを含める必要があります; これには MANIFEST.in ファイルを使います; 詳しくは distutils のドキュメントを参照してください。
ソースコード配布物をうまく構築できたら、メンテナはバイナリ配布物も作成できます。プラットフォームに応じて、以下のコマンドのいずれかを使います。
python setup.py bdist_wininst
python setup.py bdist_rpm
python setup.py bdist_dumb